透析導入前の患者様へ

透析導入前の患者様へ

透析は、腎臓の働きの一部を人工的に補う処置法です。
腎臓の働きが悪くなると老廃物を排泄しにくくなり、むくみや高血圧、貧血といった症状が現れます。腎機能の低下が進行すると「末期腎不全」の状態になり、に罹り自分の腎臓で生命を保てなくなってしまいます。

そこで、腎臓の働きを補うために透析療法が必要となります。
透析には、機械に血液を通してきれいにする「血液透析」と、患者様ご自身のお腹の膜(腹膜)を利用して血液をきれいにする「腹膜透析」の2つがあります。

血液透析

血液透析は、腕の血管を使って体内から血液を取り出し、機械を通して血液をきれいにして、再び体内に循環させる処置法です。血液透析を導入する前に、「内シャント」という動脈と静脈を皮膚の下でつなぎ合わせて血管を太くする手術を行います。
通常週3回、1回につき4時間〜通院します。医療機関で治療を行うため、時間的な拘束はありますが、医療者に任せて安心して透析をすることができます。

腹膜透析

腹膜透析は、腹膜を利用して体内で血液をきれいにする治療法です。
透析液の交換は1日4回程度、患者様やご家族・介護者の方が、ご自宅や職場で行います。月に1~2回、病院を受診します。
腹膜透析を開始する際には、お腹に直径5~6ミリほどの専用のチューブ(カテーテル)を埋め込みます。

カテーテルの出口付近は細菌による感染症を起こしやすいため、患者様ご自身での自己管理が大切になります。
出口付近を1日1回以上確認し、消毒や洗浄を行います。

透析療法を開始する時期

以下のI~III項目の合計点数が原則として60点以上になったときに、透析療法の導入適応の目安となります。
※個人差も大きいため、年齢や原因疾患・日常生活の支障度など、さまざまな情報をもとに医師が総合的に判断します。

臨床症状

以下のうち3箇以上あるものを高度、2箇を中等度、1箇を軽度とする。

1 体液貯留(全身性浮腫、高度の低蛋白血症、肺水腫)
2 体液異常(管理不能の電解質・酸塩基平衡異常)
3 消化器症状(悪心、嘔吐、食欲不振、下痢など) 程度 点数
4 循環器症状(重篤な高血圧、心不全、心包炎) 高度 30
5 神経症状(中枢・末梢神経障害、出血傾向) 中等度 20
6 血液異常(高度の貧血症状、出血傾向) 軽度 10
7 視力障害(尿毒症性網膜症、糖尿病性網膜症)

腎機能

血清クレアチニン値
(mg/dL)
クレアチニンクリアランス
(mL/分)
点数
8以上 10未満 30
5~8未満 10~20未満 20
3~5未満 20~30未満 10

年少者(10歳以下)、高齢者(65歳以上)、全身性血管合併症のあるものについては10点を加算する。また小児においては血清クレアチニン値を用いないでクレアチニンクリアランスを用いる。

III日常生活障害度

尿毒症症状のために起床できないもの 高度 30
日常生活が著しく制限されるもの 中度 20
通勤、通学あるいは家庭内労働が困難となった場合 軽度 10

透析の準備

  • 透析治療について知る

    これから透析を始める方は、どんな治療法があるのか、通院の頻度など、おおまかに理解してから治療に進んでいただくと安心です。
    人工透析とは」でも解説しておりますので、ご覧くださいませ。そのほか、ご不明点などはお気軽にカウンセリングにてご相談ください。

  • 血液透析の方…内シャントの準備

    血液透析ではたくさんの血液を透析器に運ぶため、血液流量の多い太い血管が必要になります。
    そこで、動脈と静脈を皮膚の下でつなぎ合わせて血管を太くします。「内シャント」といいます。
    血液透析を行う場合は、事前に内シャントを準備します。

  • 腹膜透析の方…カテーテルの準備

    腹膜透析を行うためには、手術をしてカテーテル(チューブ)をお腹に埋め込みます。
    一度埋め込まれたカテーテルは、基本的にはトラブルがなければ半永久的に使用します。

  • 食事療法

    透析治療を始める場合は、食事療法を行います。水分や塩分、カリウム、リンなどの摂りすぎに気をつけながら、必要な栄養素を摂ることができるようバランスよく食べるようにします。

  • 社会福祉サービスを知る

    透析が必要な慢性腎不全の患者様は、社会福祉サービスを受けることができます。
    当院でも必要があればご案内させていただきますので、お気軽にご相談ください。